ウナギが戻れば地域もよみがえる
アミタ持続可能経済研究所 有路昌彦

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ウナギは経済価値の非常に高い水産物であり、水産物の中でも大変高価な部類に入ります。日本人は世界中のウナギをほぼ全量食べるのですが、天然のウナギがほとんど獲れなくなってしまったため、日本、台湾、中国で盛んに養殖されています。

ですが、そもそも霞ヶ浦や北浦、それだけでなく日本中の川や湖や用水路でウナギはたくさん漁獲されていました。それが今のように漁獲されなくなってしまったのには、大きな理由が3つあります。

1つ目は、ウナギは海と内水面を行き来する魚なので、その往来ができなくなるような構造物ができてしまうことによって、遡上できなくなったことが原因と考えられます。ここ霞ヶ浦、北浦のウナギが減った原因とも考えられています。

2つ目は、ウナギの住処がなくなってしまったことです。ウナギは岩の隙間や用水路の石垣などにすんでいます。昔の用水路などは石垣や手で掘ったものだったので、すみやすい環境でした。またウナギの食べ物になる生き物が多くいるほうが当然ウナギも住めるのですが、今は多くの生き物が減ってしまい、ウナギも減ってしまいました。

3つ目は、シラスウナギ(ウナギの稚魚)の獲り過ぎです。ウナギの養殖は、完全養殖と呼ばれる卵から育てるものではなく、海でシラスウナギを獲ってきて、養殖場(養鰻池)で育てて大きくする方法ですので、シラスウナギは天然に依存しています。通常天然で大きくなったウナギは海に戻り、日本からはるかに離れた暖かい海で産卵します。ですが、養殖されたウナギは当然人々の胃袋に収まるだけですから、産卵することもなく、一生を終えてしまいます。それにもかかわらず、次から次とシラスウナギを獲ってしまうので、次々に資源が減っていき、今は天然に遡上するウナギも大変減ってしまいました。

今では、日本の周辺にいるウナギだけでは足らず、はるばるヨーロッパからシラスウナギを中国に届け、そこで大規模に養殖しては日本に出荷するということが繰り返されてきました。その結果、ついにヨーロッパウナギは資源量が以前の5%以下という絶滅寸前にまで乱獲されてしまい、ワシントン条約という水産資源管理の条約ではなく種の保存というぎりぎりのレベルで発動する条約で、輸出が規制されることになりました。
日本の周辺にいるジャポニカウナギも資源は以前とは比べ物にならないくらい減ってしまい、こちらも資源が枯渇しつつある現状です。

 このように、養殖のウナギであっても、天然でウナギが豊富にいる状況が維持されなければやがてなくなってしまうのです。これから5年から10年の間で、いま市場に流通しているウナギのほとんどがなくなってしまうと予想されています。

では、私たちはこのままウナギがなくなってしまうのを、黙って待っているだけなのでしょうか。私たちは何もできないのでしょうか。

その答えは「いいえ」です。ウナギを取り戻すことはできるのです。ウナギを取り戻すためには何をすればよいか、それはウナギがいなくなった原因を取り去り、ウナギが戻ってこられる環境を取り戻すことです。

ウナギが戻ってくればどのようなよいことがあるのでしょうか。それは、ウナギは今後世界的に大幅に減少してしまっていますので、市場価値が大変高くなっています。ですからウナギの漁獲量が増えれば、周囲の漁業者の皆さんの経営が前よりずっとよくなります。そして、漁師さんの経営が安定するということは、その経済活動によって地域の経済が元気になってくるということです。そして、ウナギが流通されていく過程で、関係する仲買さんや小売さん、料理屋さんもみな潤っていきます。このようにウナギが戻ってくるだけで、多くの経済が動き出し、たくさんの人が持続可能な生活をすることができるようになるのです。

それだけではありません。霞ヶ浦や北浦のような大きな湖にたくさんのウナギが帰ってくる環境が取り戻されれば、ウナギの中には産卵をするために海に戻るのも多く出てきます。するとシラスウナギも増え、戻ってくるウナギも増えてくることでしょう。

もちろん、シラスウナギの資源管理も、戻ってきたウナギの資源管理も必要です。ですが、まずはそのウナギが戻ってこられる環境を取り戻すことこそが、何よりも第一歩になるのだと思います。