■生態系としてのアサザ

 アサザはしばしば大きな群落を形成しますが、湖底の安定化、地下器官からの酸 素供給、消波作用、盛んな枯死分解による栄養塩供給などといった高い環境形成 機能をもっており、それ自体が重要な生態系としての役割を果たします。オラン ダのBrockらの研究によれば、アサザ群落内では無脊椎動物の種数 個体数 バ イオマス(生物体の量)が水生植物の生育していない場所に比べて有意に高く、 特に地下部での豊富なバイオマスの大半を占める二枚貝類は、アサザ群落内でし か見られないことが明らかにされています。

図:オランダBemmelse Strang湖における、アサザ群落内と水草の生えていない
場所での無脊椎動物群集の比較 (Brock & van der Velde 1996 より改図)

 アサザの環境形成機能に関わる生態学的特性については以下のような研究がなされています。


換気

  • 嫌気状態となる湿地で生息するため、アサザをはじめとする浮葉植物は「換気」と呼ばれる通気システムを備えている(Gross & Mevi-Schutz1987)。新しい葉からとりこまれた空気は地下茎や根へと送られ、有毒な化合物の蓄積を解消する。アサザは特に根の部分から集中的な土壌への酸素放出が確認されており(Smits et al. 1990)、他の浮葉植物と同様に湿地の土壌の嫌気状態を改善する役割を果たしている(Gross 1996)



物質循環

  • 生産された葉の10%程が、蛾(Van der Velde 1979)や水鳥の餌として利用され、残りは菌類によって分解される(Van der Velde et al. 1982)。この過程で、土壌中の無機窒素や無機リンをポンプアップして水層に供給している(Brock et al. 1983)ほか、食物網を通じて栄養塩が陸上に持ち出されることで生態系として水質浄化の機能も果たす



消波効果
  • アサザは広範囲にわたり浮葉を広げるため消波効果を有し(林ほか 2002)、それ自体が水辺の植生帯を保全する機能をもっていると考えられる



文責: 東京大学 保全生態学研究室 高川晋一 2003年5月27日

     
[前文]  [アサザの生態 ■アサザの分布とその現状]
 [■アサザの生活史]  [■生態系としてのアサザ]  [引用文献]

[HOME]