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アサザプロジェクトにおけるビオトープの位置づけ−本文 |
2003年12月 NPO法人アサザ基金 代表理事 飯島 博 |
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※以下、講演要旨を一部抜粋 アサザプロジェクトでは霞ヶ浦で自然再生事業を行っています。湖では浅瀬を造成したところに、地元の婦人会のほか、小学生が霞ヶ浦産の水草を植えていきます。霞ヶ浦産の水草というのはほとんどなくなっているわけですが、それをどうしていくかということは後でお話します。まずどんな景観に戻していこうかということですけれども、それは福祉事業として世代間交流事業というのが行われているのですが、それを自然再生事業とリンクさせています。11ヶ所の工事現場周辺の小学校で、お年寄りから子ども達が聞き取り調査をして、昔はそこがどんな場所だったのか、どんな植物が生えて、どんな風に地域の人々が関わっていたのかということを、一緒に絵を書いてもらいます。そのほか、いろんなアンケートに答えてもらって、これらを参考にしながら先ほどの再生事業を進めていくわけです。 具体的には霞ヶ浦産の水草だけをどうやって供給するのかや、外来種が入らないようにどのように管理していくのかということですが、流域の113校の小学校にビオトープを作りまして、そこに霞ヶ浦産の水草を植えます。ミニ霞ヶ浦ですね。それからこの池の真中のがアサザですね。これは先ほどの、由来証明書がついたものですが、それぞれの学校に分けて保存されるわけです。ビオトープは大体3年くらいで中が水草でいっぱいになりますので、カエルやトンボが住みづらくなってくる。そういうことを子ども達が学習して草を間引きます。生息空間を作るために間引くわけですね。その間引いたものを先ほどのように霞ヶ浦に植えに行くわけです。このビオトープの設計に関しても、授業を必ずやって、子ども達と一緒に考えます。 これは、ビオトープを作る土を子ども達が運んでいるところです。こんな感じで年間一万人近くの子ども達とお付き合いをしながら、霞ヶ浦の再生事業と一体化した環境教育に取り組んでおります。 ビオトープを設置した学校が霞ヶ浦の流域に113校あります。私達はNPOですから力も権力もお金もないわけです。霞ヶ浦流域全体に動かす事業を進めていくのに、新たなインフラの整備をやれるわけがないですから、私達の戦略は既存の社会システムを使う、既存の社会資源を使う、それからそのシステムを質的に転換してしまおうということですね。 小学校というのは子どもが歩いて通うことが前提ですので、だいたい半径2〜3キロぐらいで学区が設定されているのです。教育の機会均等が保証されていますので、流域に満遍なく学校があります。同時にそれらの学区が地域コミュニティの単位なわけですから、お年よりも含めて日常的に人が行動する空間となっているわけです。 ここでもう一つ大事なのは、社会的なシステムの中で、弱いものに合わせて空間配置が行われていることです。これは、学区ぐらいしかないのではないかなと思うのですが、それは生きものにとっても同じで、弱い生きものが移動する単位としても学区は活用できます。 この学区や学校という面的な広がりをもって、しかもネットワーク化されている既存の社会システムをうまく使っていくことで、流域全体を視野に入れた事業が実現できるはずです。 何をしているのかというと、小学校のビオトープを作るときに、子ども達と事前に学習をするわけですが、ビオトープの設計もしていくわけです。決まり事が一つありまして、ビオトープの中に入れていいのは学区内のメダカとタニシだけだということ。いろんな生き物が学区や学校の周辺から供給されてくるのですが、あとは来るのを待ちましょうということです。学区内にいろんな環境が残っていれば、いろんな生物も集まってくる。そうやって集まってくる生物をモニタリングして、日常的に観察を行います。どんなに調査員や研究者がいても、流域に分布する113の小学校を毎日回って同じ時間に見ることはできません。やっぱりそこの日常を持っている人たちが、一番その地域の環境情報を持てるわけですし、いろんな生き物と出会う機会を持っているんですね。その人たちの情報をというのは、実際ほとんど今は生かされていないわけですから、これを生かすための一つの大きな材料として、ITというのを提案したわけです。 日常が持っているいろんな可能性を引き出していく事業展開のやり方を、NECという会社(注:日本電気株式会社)に提案をしました。その提案を4月頃行ったのですが、NECも乗ってきまして、今日お配りした下敷きもNECが作ってくれたものです。このように霞ヶ浦という広大な地域のモニタリングシステムを構築していく共同開発事業が今行われています。これは新しい社会システムの構築を目指す取り組みです。自然再生の日常化、あるいは、野生生物を社会システムとして受け入れるという、新しいものとものの繋がり、あるいは既存の社会システムに全く今まで気がつかなかった新しい価値を見出すことにも繋がり、社会の可能性が広がります。それが企業にとっても大きなビジネスチャンスになるということですね。 私が提案した学校ビオトープのコンセプトは、造ってみんなで勉強して終わりという自己完結型ではなく、ビオトープは大きなシステムを考えつくり上げるための1つの装置に過ぎないんだということです。 学校にはいろんな人たちの子ども達が集まってくる。地域の拠点、地域コミュニティの拠点としての学校というのが、最近重視されていますね。いろんな人たちが集まる場所、拠点です。そこにビオトープが造られるということは、先ほどお話したようにいろんな場所からいろんな生物が供給される、生物の側から見た拠点が生まれるわけです。その拠点と拠点を共有しあう、生きものと人間が地域コミュニティの一つの拠点として学校という場を共有しあいながら使うところ、というふうにとらえています。さらに、この拠点から他の小学校とも連携をしながら、生き物や環境を流域レベルで把握するようなシステムを作っていくわけです。 これは実はコンピューターで子ども達が流域レベルで生物や環境を学習するためのインターフェイス画面です。この中でNECが開発したアドホック・マルチホップというセンサーネットワークを用いて、各センサーからセンサーに無線でデータを通信していくシステムです。リレー式にどんどんどんどんデータが送られていって、面的に大きな広がりのある地域での環境情報がリアルタイムに把握できる新しいシステムなのです。太陽電池を電源にしています。それぞれの場所の温度や湿度、日照それから画像などのデータが集められます。今後このセンサーを流域各地に増やしていく計画ですが、そう言う環境データを子ども達の学習の展開と一緒に、拠点になっている学校から学区内へのハビタット、特に一番弱い生物としてカエルの移動を想定しながら、いろいろな水辺環境や生息地に設置していこうという学習を始めています。 このセンサーの電波が大体カエルの移動可能距離と同じ500メートルから1キロメートルぐらい届くんですね。カエルとたまたま一致していたということですが、そこでカエルとセンサーの移動通信距離と一致させた単位として、ここに書いてありますけれど、1ケロメートルと呼ぶことにしました。こういう学習を小学校でしています。 こういうセンサーの設置に関しても、必ず出前授業をやって、私だとか、あるいはNECの開発担当者が子ども達と授業をやりながらいっしょにプロジェクトを進めていくわけです。学校の中にビオトープを設置して、生き物たちがどこからやってくるのか。カエルは500m〜1000mですから大体学校の周辺です。それから学区は徒歩圏、これは大体2kmということでイトトンボの移動距離と一致します。それから、自転車で回れるくらい、まちの中全体ぐらいです。これはギンヤンマが大体4km移動する範囲と同じです。これよりも大きな範囲で飛行距離が流域全体に及ぶのが、トキやコウノトリです。この範囲内の学校を先ほどのITで繋いでいくわけです。学校と学校のネットワークが面的に広がっていて、学習を通して情報交換をしていくことによって、日常の延長として流域を感じとり見ていく。トキやコウノトリが生息する空間を日常的にみんなで共有しあうわけです。 コウノトリの野生復帰とは、つまりコウノトリと私達が日常を共有しあうということです。おそらく、コウノトリと日常を共有しあうには、大変な困難が伴うでしょう。それらの困難を乗り越えるためには、ぼくら自身が持っている、日常の中に眠っている豊かさだとか、あるいは可能性を切り開いていくことが必要なのです。現代の技術にしても、あるいは政策にしても、われわれNPOの活動にしても、まだ十分に日常の有するエネルギーを引き出していない。日常から何か大きなエネルギーを切り出す。そういう仕組みをつくり上げていないから行き詰まるのです。 僕はこういう、日常というものを人々の身体的空間と生きものの空間を一致させること、さらに共有しあうこと、それを少しずつ広げていくことによって、地域を覆い流域を覆いながらいろんな生き物たちと共存していきたいと考えています。そのときに、僕はITというものが一つの意味を持ってくると思うのです。 それから、もう一つはこのような事業を進めていく、広げていく上で、必要なのはやっぱり意思だと思います。夢といってもいいでしょう。トキやコウノトリと一緒に住みたいという夢を、たくさんの子ども達がどれぐらい持ってくれるかということが、これからの大きな課題になると思うのです。ですからアサザプロジェクトは、子ども達の学習意欲や夢の広がりと一体となって広がっていくようにしたいです。 |