| 外来種(移入種)問題に関するアサザ基金の見解 | 2003年2月4日付 |
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・生物多様性への影響が懸念される全ての外来種に対策が必要である 生物多様性の保全は今日、地球環境を守る上で重要であることが広く認識されています。また、その保全が急務であることから、条約や法律等の整備も進められています。 その生物多様性を脅かす大きな要因の一つとして外来種問題があります。そして外来種の問題は現在、日本だけでなく世界で深刻な影響を自然環境や社会に与えています。しかしこれまで、外来種の問題は特定の種に対しての議論に終始し、あまり有意義な議論に発展しないケースが多かったように思います。 このような状況のなか、アサザ基金では、霞ヶ浦の再生に向けて外来種問題を総合的にとらえ、ブラックバスやホテイアオイなど、特定の種だけを問題視することなく、生物多様性への影響が懸念される外来種全般について対策を講じる必要があると考えます。 ・生物多様性の意味の正しい理解を推進する 昨今のブラックバスを中心とした外来種問題の議論が混乱している背景には、生物多様性に対する理解の欠如、もしくは間違った理解があるのではないでしょうか。生物多様性は、生物間や生物と環境との複雑な関係性の上に非常に長い時間をかけた進化の歴史のなかで作られてきたもので、地域の生態系を維持する重要な要素となっています。外来種の持ち込みは生物間の均衡のとれた関係を壊し、生態系全体に影響を及ぼします。(もちろん生物多様性の危機は外来種によるものだけではありません) アサザ基金では生物多様性の意味を、多くの人たち、特に子どもたちに伝えていくことが重要だと考えています。大学や研究機関と共同で進めている植生帯復元活動と連携した小・中学校での環境学習を行っており、その中で生物多様性について理解を深める授業を行っています。 ※日本を含む183カ国(2002年8月現在)が締約している生物多様性条約において、締約国には「生態系や生息地、種の存続を脅かす外来種の導入は防止し、すでに導入された外来種については抑制するか根絶する」ことが義務づけられています。 ・地域の生態系に影響を及ぼす全ての要因に対して対策を進める アサザ基金は、霞ヶ浦のダム化や護岸工事の見なおしを求めてきた、数少ない市民団体の一つです。そして同時に外来種問題にも取り組んできました。これまで実際に行ってきた外来種対策を以下に挙げます。 ・霞ヶ浦や流域などで在来魚の生息に適した環境づくりを進めており、多くの地域で在来魚や在来の植生などが戻りはじめ成果を上げつつあります。 ・外来種問題についての総合的な対策を提案し、行政機関に要望を行ってきました。 ・外来種の分布状況や、影響に対する調査、研究を行い、データの収集に努めてきました。 ・生物多様性保全に関する条例案の作成と提案を行ってきました。 ・外来種についての正しい知識・理解の普及(学校での学習協力、住民参加の環境調査、市民のビオトープの管理においてなど)を行っています。 ・影響を総合的に評価すると外来種導入は社会的損失になるのではないか 日本では霞ヶ浦に限らず、驚くほど多くの外来種がその生態系への影響を全く考慮されずに導入され、その後の管理についてもおろそかにされてきました。そのため、その多くが定着し、深刻な問題を引き起こしています。 外来種の導入を推奨する人たちには、外来種による効用のみに目を奪われることなく、それらの種が生態系全体に及ぼす影響について配慮した判断が求められます。部分的、あるいは局地的な効果を得られるとしても、外来種による生態系や社会への影響も考えたときに、外来種対策に投じられる費用(マイナスの効果)と比較して本当にプラスといえるでしょうか。 外来種の導入には徹底的な管理が必要であることを、導入を推進する人は念頭に置かなければなりませんし、徹底的な管理にかかる手間や費用は相当なものになるでしょう。ましてやどんな管理下でも絶対に逸出・拡散しない保証はありません。また逸出した外来種が野生化した場合に、その影響により被る経済的損失や、外来種対策にかかる費用などの経済的な影響ははかりしれません。 このような視点から総合的に評価すると、外来種の導入はマイナスの部分が多く、大きなリスクを伴うのではないかと考えます。 ・外来種の導入には規制が必要である 外来種問題はブラックバスの問題におけるマナー普及やワームの生分解プラスチック使用推奨などのように、個別の対策に矮小化して議論するべきではありません。 また外来種導入による生態系への影響の大小は安易に評価出来ません。なぜならその影響に関する研究も進んでおらず、とても複雑で解明されていない部分が多いからです。先に述べたように、外来種の導入が生物多様性や社会経済に大きな損失を与えた例はこれまでにも少なくありませんし、導入された外来種の大半は逸出・野生化を完全に防止することが不可能であると考えられます。このような状況を踏まえると、やはり外来種の導入に対しては規制が必要であると考えます。 また海外からの日本国内への生物の導入、つまり輸入の規制が必要であると考えます。 現行の規制には、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」、「農業に有害な動植物の輸入を禁止する植物防疫法」、「家畜への伝染病の発生予防および蔓延阻止を目的とした家畜伝染予防法」などがあります。しかしこれらは各法律の目的に基づいた、ごく一部の外来種のみを規制の対象としています。これらの法律は、生物多様性の保全について配慮を欠いています。このように日本には、外来種の輸入に対するの有効な規制がないため、生態系への影響が考慮されないまま、外来生物の導入が安易に行われています。 私たちは予防原則にのっとって、生物多様性への影響が懸念される外来種の輸入の禁止が必要であると考えます。 ちなみに国際的な自然保護機関であるIUCN(国際自然保護連合)の出した『外来種による生物多様性の減少を防止するためのガイドライン(指針)』では、「導入の予防」をなにより最初の目標としていますし、環境省が策定した新・生物多様性国家戦略では、外来種の侵入の予防措置を外来種対策の第一に挙げ、最近では法制化の動きもあります。 ・生物多様性への影響が懸念される外来種に対しては、根絶もしくは抑制をする努力が必要である またすでに定着してしまったものに関しては、ICUNでは「全ての外来種の完全な駆除(根絶)」を目標としていますが、実際には無理な場合が多くあります。 しかし「全ての外来種の完全な駆除」が無理でも「特に生物多様性への影響が懸念される外来種」について、「出来る限り個体数を減らす(抑制)」努力をするべきです。(これについてもIUCNが述べています) アサザ基金はこの考えに沿って対策を行うべきだと考えます。 ・問題解決には科学的なデータに基づいた議論と様々な立場(主体)の参加が必要である 外来種対策が十分に進まない背景には、外来種をめぐる利害の対立(立場の違い)に基づく一方的な主張や断片的な情報のやりとりがあるのではないのでしょうか。 まず私達は情報やデータの共有化と、それらのデータに基づいた科学的な議論が必要だと考えます。そして議論の場はもちろんとして、データを集めるための共同調査・研究への参加を、大学・研究機関、行政だけでなく、漁業関係者や釣り関係者、外来植物普及団体など様々な立場の人にも求めたいと思います。 アサザ基金では、霞ヶ浦において、以上に述べた議論の場の設置、調査・研究を、各関係者の協力を求めながら進めて行くつもりです。 <用語> ※1)外来種:人間の様々な活動に伴って、本来生息している分布範囲を超えて持ち込まれた生物を「外来種」と呼びます。 ※2)在来種:海や陸地、山脈など様々な自然要因によって分布を制限され、長い年月をかけてそれぞれの地域環境に適応し、地域の生態系のなかで関係を作り上げながら進化してきた生物を「在来種」と呼びます。 ※3)生物多様性:地球が誕生してから現在まで、生物間や生物と環境との複雑な関係の上に非常に長い時間をかけて作られてきたもので、生態系を維持する重要な要素となっています。多くの生物がその生態的特性や、周囲の環境、歴史に応じて地理的に限られた分布を示し、独自に進化を遂げてきました。そういったなかで生まれてきたそれぞれの地域固有の生物および環境を守っていくことが地球規模の多様性につながります。生物多様性には「生態系の多様性」「種の多様性」「遺伝子の多様性」が含まれます。 〜私達人間もこの生物多様性の恩恵を授かりながらこの地球で生存しています。〜 |