河川整備計画公聴会・意見書  2007/3/22

国交省の河川整備計画策定に関する公聴会で飯島代表理事が意見を述べました。田中正造の言葉を引用しています。

国交省は全国の河川湖沼の整備計画の策定を行っています(2006年度)。今回は新河川法になってから初めて行われる河川整備計画の策定ですが、利根川水系では住民参加で行われた淀川水系のような流域委員会の設置は行われず、完全に行政主導の形で計画策定が進められいます。2007年3月8日に霞ヶ浦環境科学センターで同計画案に対する公聴会が実施され、アサザ基金代表理事の飯島が意見を述べました。
公聴会は多くの住民が参加することが困難な平日の昼間に行われたため傍聴者も少なく、主催者側もまばらでした。まさに、「聞き置くだけのガス抜きの場にすぎない」という印象を持ちました。
飯島は公聴会のあり方を批判し住民参加による流域委員会の設置を要望しました。当日の公聴会での意見要旨は以下に示すとおりです。意見を述べた最後に田中正造の言葉をこれからの河川行政に活かすこと求め紹介しました。利根川水系に大きな影響を与えた足尾鉱毒事件によって、谷中村が滅亡してちょうど100年が経ちました。治水と公害によって人権と民主主義、環境が破壊された事件の記憶を風化させてはなりません。
「いにしえの治水は地勢による。あたかも山水の画を見るごとし。しかるに今の治水はこれに反し、定規をもって経の筋を引くがごとし。山にも岡にも頓着なく、まっすぐに直角につくる。治水はつくるものにあらず。我々はただ山を愛し、川を愛するのみ。いわんや人類をや、これ治水の大要なり。」田中正造

『利根川水系河川整備計画「霞ヶ浦」に関する意見と提案』
NPO法人アサザ基金 代表理事  飯島 博

1.霞ヶ浦の管理目標水位を自然環境保全に配慮したものにする。11月16日から2月末までの水位の上昇(Y.P1.3m)をY.P1.0m以下に見直す。
 霞ヶ浦の管理目標水位は予め数値によって定められたものではなく、判断材料には自然環境への配慮が盛り込まれています。管理目標水位の設定にあたり自然環境への配慮が重視されることは、「霞ヶ浦開発施設に関する施設管理方針」(以下、管理基本方針)の第3条に第1項には「この施設の操作は常陸川水閘門の操作と一体となって、次に定めるところにより行うものとする。この場合において、湖岸の動植物等霞ヶ浦の環境の保全に十分配慮するものとする。」と明記されているとおりです。
 1995年当時には、利水上限水位の運用による自然環境への影響を懸念する指摘が「霞ヶ浦・北浦をよくする市民連絡会議(以下、市民連絡会議)」からあり、霞ヶ浦工事事務所は自然環境への配慮を一部反映した管理目標水位を設定し、その理由を「ヨシを主体とした植物の生育期、開花・結実期である4月から10月中旬は、YP1.1mを中心として管理を行います。」(建設省関東地方建設局・水資源開発公団1995年10月)と説明しています。
 1996年から上記の管理目標水位に基づく霞ヶ浦開発事業の運用が実施されましたが、2000年までにアサザ群落などの植生帯が急激に減衰するという事態が生じました。植生帯の減衰の原因として、冬期の水位管理にあるとの「市民連絡会議」とアサザ基金の指摘を受けて冬期の管理目標水位YP1.3mがYP1.1mに暫定的に変更されました。2000年以降は市民と国交省、NPOの協働による植生帯の保全再生(自然再生)を目的にこの暫定的な水位管理が実施されてきました。
 このような経緯を見ても、霞ヶ浦河川事務所と水資源機構はその時々の状況に合わせ自然環境への配慮や自然再生事業の一環として、管理目標水位の設定や暫定的な水位管理を実施してきたことが理解できます。しかし、研究者からは現在暫定的に行われているYP1.1mによる通年管理によっても、植生帯の減衰や多様性の低下が継続していることが、科学的なデータに基づき指摘されています。
 今後の管理目標水位の設定にあたっては、できるだけ自然のリズムに合わせ冬から春に低く夏から秋に高めの水位管理を行うよう求めます。茨城県の長期水受給計画改正案では余剰水が一日45万トンも生じるとしています。これにより将来の水需要の増加を想定して行われている冬期の水位上昇実験の根拠は失われました。また、冬期の水位上昇(Y.P1.3m)による影響はすでに1996〜2000年までに実証済みであり、この間に行われたモニタリングのデータを解析することで明らかにすることが可能です。特に、既存植生に影響を及ぼす恐れのある冬期の水位上昇実験はすぐに中止するべきです。
2.常陸川水門(逆水門)の柔軟運用を提案します。
 アサザ基金は逆水門の柔軟運用を提案しています。(詳しくはアサザ基金ホームページ参照)河川中央部を移動するシラスウナギなどの魚類の遡上を可能とする水門管理を実施して、湖の生態系や水質の保全と漁業振興、地域活性化を同時に実現させるという提案です。逆水門の柔軟運用は秋田県八郎湖や鳥取県東郷池等でも実施されています。
3.消波施設の設置について。
 石積みの消波施設は生態系を分断し、ヘドロの堆積や水質の悪化、外来動植物の増加等の悪影響を及ぼします。消波施設の設置が必要な場合には、順応的な管理が可能な粗朶消波施設の設置を行うよう提案します。霞ヶ浦では国交省が1996年以来、粗朶消波施設を設置してきた実績があり、これまでの経験を活かして設計に改良を加えていくことを要望します。粗朶消波施設は琵琶湖や八郎湖でも設置が行われています。



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