はてしない物語 2002.3.13

 「想像してごらん・・・戦争のない平和な世界を、差別がなくなり信頼で結ばれた世界を」米国の 同時多発テロが起きた直後に、ラジオではジョン・レノンのイマジンが繰り返し流されたそうです。
 平和な世界も、それが実現した時のことを想像することができない人には、実現することはでき ないでしょう。しかし、平和も平等も、そして自然と調和した社会も、人類が長い間追い求めてき てもまだ達成できません。だからそれは「人類が追い続ける夢」と言い換えてもいいかも知れませ ん。「私には夢がある・・・」キング牧師の有名な演説の冒頭の言葉です。わたしたちを破局から 守り、社会の健全さを支えているのは、実は人類が共有するそんな夢の力ではないかと思います。
   子どもの頃にはたくさんの夢を持つものです。子どもは夢を生み出す天才です。でも、社会では 夢を実現しよう一歩踏み出すと、必ず壁にぶつかります。「そんなのはただの夢にすぎない」「そん なことできるわけがない」「世の中そんなに甘くない」「無理だ」・・
 けれども、世界中から夢が消えたら、どんなに恐ろしい世の中になるか。だから、世界には夢を 生み出す子ども達と、大人の心の中で生き続ける子どもが必要なのです。「すべて子どもは大人の 父である。」ワーズワースの「虹」という詩の一節です。偉大な市民科学者である高木仁三郎氏が 彼の著書「わが心のエコロジー」の中で、この詩を引用していました。高木氏は常に市民の中にあ って新しい科学が生まれる現場に立ち続けようとした真の科学者でした。
 夢は常に試されます。本物の夢は社会に吹く向かい風の中で育ちます。夢は守ることでは生き続 けません。私達が自分自身と向き合い続けることで、夢は生き続けます。エンデの「はてしない物 語」は夢が少年の人格をつくり上げる過程を描いた壮大な物語でした。
 アサザプロジェクトも「大自然が復活した霞ヶ浦を想像してみよう」「みんなで夢を実現させよ う」という呼びかけから始まりました。その夢はただの思い付きではなく、科学の目によって生ま れたものです。そして、その夢は今何万人もの人々が共有するものになりました。夢に向かって一 歩踏み出したとたんに、夢は「ただの夢」ではなくなりました。それは自分たちにも「霞ヶ浦を再 生できる」という確信となり、人々に行動を促しました。漁師さんや小学生、住民、科学者が協力 して、7年間小さな取組を積み重ねてきました。そして、子ども達の活動を中心に進める霞ヶ浦再 生事業「市民型公共事業」が動き出しました。
 夢の実現に向けて動き出した時、やはり向かい風が吹き出しました。勿論わたしたちは批判に耳 を傾けることを忘れてはいけません。重要な指摘を見落とすことなくわたしたちの事業に活かして いく姿勢が必要です。しかし、中には相手を否定するための誹謗中傷を目的とした批判もあります。 このような批判者の本当の標的は「人々が共有しはじめた夢」だと思います。
 アサザプロジェクトはいつも試されています。向かい風の中でも育つ本物の夢であるのかを。
2002.3.13 トキの島・佐渡にて   (代表理事  飯島 博)

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