聞き書き 里山の暮らし −土浦市宍塚−

まえがき

土浦市にある宍塚大池の周りは航空写真で見ると関東平野に浮かぶ「緑の島」のように見えます。はじめて訪れた人は「ふるさとを思い出す」「ほんとにきてよかった」などと口々にいわれます。ここには池を中心に林、湿地、谷津田、草原など、変化に富んだ環境があり、たくさんの生き物が互いに関連をもってくらしています。身近な自然である里山が急激に姿を消していった中で、宍塚大池地区は環境庁の「生物多様性のための重要地域」にも選ばれた貴重な場所になっています。

車の行き交う道路をそれて一歩中に入ると静かな村の佇まいが私たちを迎えてくれます。この地は歴史的にも大切な所で、上高津貝塚(国指定史跡)をはじめ豊富な遺跡群、古墳群、中世に栄えた般若寺(銅鐘は国の重要文化財)などがあります。

「宍塚の自然と歴史の会」は、一九八九年発足以来、山主さんの許可を得ての林の下草刈り、休耕田の草刈り、小川の整備、ごみ拾い、年七十回以上の観察会、昆虫、鳥、哺乳類、植物、キノコ、水質の調査など、さまざまな試みを行ってきました。そんな中で地元にお住まいの方々とも出会い、子供のころ大池で泳いだこと、大きなうなぎをとったこと、林がとってもきれいでダイコクシメジなどおいしいキノコがたくさんとれたことなど楽しい思い出を伝えていただきました。

今、日本のトキは絶滅しようとしています。トキは里山で暮らしてきた生き物です。里山の自然の意義が注目を浴びています。農業や日常の暮らしと自然が深く結びついて生み出されてきた里山は、先祖の知恵の結晶、まさに文化財といえるものです。人々の暮らし方と自然条件によって、里山にはさまざまな個性が生まれます。この三十〜四十年で農業も暮らしも急激に変化しました。里山の未来を考えるとき、これまでの人と里山の関わり、その土地その土地に即して学ぶことが、大切で急がれる課題となっています。

私たちは、会発足当初から地元の方々のお話しを伺い、会報などでそのつど記録を残してきました。一九九八年からは歴史部会を作り、聞き書きや資料の収集を行っています。何回も時間をさいて、たくさんの話しを語ってくださったり、貴重な品を取り出して見せてくださったり、一緒に歩いて地名を教えてくださったり、多くの地元の方々のご協力をいただくことができました。さらに今後も進めていくつもりですが、まず、これまでのものをまとめました。

この冊子が先祖のくらしの歴史をふりかえる一助となり、また少しでも今後の里山保全に役立つものになればと願っています。

宍塚の自然と歴史の会・歴史部会


宍塚の自然と歴史の会 1999