こんなところです、宍塚大池

 古い時代に、台地に刻まれた3本の谷をせき止めて造られた面積3ヘクタール余りの農業用のため池です。 上空から見ると「大」の形をしているので大池と呼ばれたとも言われます。
 池を中心に周囲には約100ヘクタールの緑地がひろがっています。湿地、小川、広葉樹林、竹林、杉や檜の植林地、 草原、谷津田、畑などが緩やかな起伏の上にモザイク状に組み合わさり、複雑な自然環境を作っています。 流れ込む川はなく、周りにある林や草原が池の水源です。

豊かで貴重な自然

植物

 落葉樹が芽吹く春、宍塚大池の雑木林が美しく輝きはじめます。 林のあちらこちらに山桜が咲き、 道ばたや林にすみれや春をいろどる草花がつぎつぎと咲きそろいます。 新緑におおわれた林も、晩秋にはあざやかに紅葉します。
 大池周辺では、茨城県内で見られる植物の約3分の1にあたる、700種ほどが確認されています。 この豊かな多様性は水辺、谷津田、雑木林、草地、松林などさまざまな環境が広く入り交じっているためです。 国内各地で、その土地特有の植物が減り、外来種がめだつようになってきました。 しかし宍塚大池周辺の林には、昔から日本にある植物が数多く残っています。 ここは、里山の環境がよく保たれている貴重な場所なのです。

野鳥

 広い緑地と豊富なエサがあるので、季節ごとにさまざまな鳥たちがやってきます。
 スズメのように一年中見られるものの他に、東南アジアから繁殖に来るサシバや、 秋に北国から冬越しにくるカモ、春秋に訪れるキビタキなどの旅鳥など、 見られる野鳥は多種にわたり、これまでに143種類(タカ類は10種)が確認されています。 冬には数百羽のコガモと、彼らをねらうオオタカの狩りのシーンに出会うこともあります。

昆虫

 カブト虫、クワガタ、チョウ、トンボなどいろいろな昆虫が見られます。 いままでに62種のチョウが見つかっていますが、 これは日本に生息するチョウの4分の1以上になります。 これほど多くの種類が見られるのは落葉樹林、照葉樹林、湿地性の林、竹林、草地など チョウの幼虫が食べる植物がよくそろっていることと、チョウが好きな花がつぎつぎに咲くからです。
 ツマキチョウ(=写真)は春先だけに見られるチョウです。 卵はタネツケバナに産みつけられ、幼虫はその実のさやによく似た細長い形をしています。 また、一年のほとんど(11カ月)をさなぎで過ごしますが、その形は植物のトゲにそっくりです。 鳥など敵の目を逃れてたくみに生きているのですね。

暮らしとの関わり

 池を囲む里山はそのほとんどが私有地で、この一帯は大昔から人々の生活の場です。 人々が長い間守り利用してきた林や林は、燃料や肥料、建築材料を得るものです。 同時にさまざまな動植物と生活の場を共有して、人と自然共生の文化を育んできました。
 池と林がセットになって、田畑と共に農家の生活を支える里山文化が長い間保たれてきましたが、 関東平野では、30〜40年前にはどこでもふつうに見られたこのような里山は、戦後の経済成長に伴って急速に失われています。 宍塚大池のように広い面積の里山がまとまって残っている場所は、極めて貴重な存在になってしまいました。

歴史と遺跡の宝庫

 宍塚大池のまわりには、小高く作られた古代の墓があちこちにみられ、宍塚古墳群と呼ばれています。 そのほかに、旧石器時代後期(1万数千年前)からの各時代の遺跡が十数カ所知られています。 そのうち上高津貝塚では、縄文時代の食べ物などが調査され、生活のようすが研究されてきました。 栗崎遺跡では縄文時代の生活用具と古墳時代の祭りの道具が数多く発見されています。

 

未来へ伝えたい

 ここ宍塚で土浦市が池を中心にした公園にすることを提案し、それ以外は市街化する開発を望んでいます。 これでは豊かな里の自然のごく一部しか生き残れないのではないかと心配されます。 地主・行政・市民の方々といっしょに、英知を結集し、 古くから大切に育てられ、伝えられてきた宍塚の豊かな里の自然と、 先祖のくらしの様子や願いを今に伝えてくれる貴重な遺跡を文化遺産として残す方法を考え、 未来の子供達に伝えたいと思います。